世界を養う植物の話
「プルーダーズ・パープル」という名前の果実は、ナスのような黒紫色で5ポンドの重さがありました。
別の変わったものは、表面の皮が毛羽立ちモモの形をしていました。
トマトはたいへん適応性が高く、簡単に無数の種類をつくり出せることがわかっています。
ところで、すでにこんなにたくさんの栽培品種があるのに、なぜトマトの野生種をわざわざ保持しなければならないのでしょうか。
これまでにいたるなかで、この作物に関する、たいへん幅広い遺伝的基礎が得られているといえるのに・・・。
ほんとうのところ、いつ、どの遺伝子が必要とされるかわからないので、遺伝子を保持することは、運任せの勝負事と言えないこともないのです。
たとえば、20世紀後半の農業が直面している問題の1つは水質悪化で、とりわけ乾燥地帯がひどいです。
そこでは、塩水しか得られなかったり、水分が蒸発して土壌塩濃度が高くなったりします。
ガラパゴス諸島では、リコペルシコン・チーズマニーというトマトの野生種が見られ、海水のしぶきがかかるような砂丘に生育しています。
その果実はみすぼらしく、苦く、小さく、食べられません。
何年も前に、この種が将来価値あるものになろうと予測する人はほとんどなく、かりにいたとしてもごくわずかでした。
しかし、この苦くて食べられない果実をつける野生のトマトは、塩気のある土地での生育を可能にする遺伝子を持っているのです。