正座をする生活 2

腰かけて足を放り出しておく欧米のモラルは、歩くには必要でもじっとしているときには不要な足を、腰の下に折りまげて片づけておく日本の姿勢にとって代わった、とする見方もあるでしょう。


過去、畳敷の日本住宅での正座が定着したのは、待機の姿勢です。


武家の座敷はすべての道具、日用品がとり片づけられているのが良しとされ、いわば"無"の状態です。


わたしもこの状態に近づけたく思い、家具 買取などで不要な家具を処分しています。


それは待機の姿勢でいったん緩急あるときは、納戸や長押から必要なものが即座にでてきます。


余計なものは一切おかず、ちりひとつとどめない座敷を良しとし、美しいとした、と多田道太郎氏の説です。


畳を敷きつめた室内では、すべての人が畳という同一平面上で行動するようになり、みんなが椅子に坐っているのと条件は同じです。


だから、序列をつける必要があるときには坐る位置によってそれを決めます。


宴会などでは床の間を背にするのが正客だとされています。


人数が多くて仕切りを外して大部屋にしたとき、両方に床の間があって、幹事役がすったもんだ苦心をしているのを見受けるが、そんなことにはおかまいなしで席につく人も多いのです。


椅子式で数が限られていると立っ人がでてきます。


年功序列で高齢者から腰かけることがあるだろうが、みんなが立ったままのスタイルのほうが上下のへだたりがなくてよいでしょう。

正座をする生活

私の寓居では、学生たちと食事をするとき床面に坐ってもらうほうが収容力が大きいです。


それをいいことにして、食事用の椅子は家族の数しか用意していないし、部屋を占有する大きな家具を買うことをなるべく制限しています。


いらない家具は不用品 買取で処分しました。


若い学生諸君がやってきて、いわゆる正座をする人はめったにいないのです。


柳田国男氏の"民間些事"によれば、きざはしの前で貴人に対した正座は拝脆の礼に始まります。


それは、腰を足の裏につけてはいけない作法です。


しかし、対等の双方が膝を屈して謹んでいる間に、だんだんと婦女子も足の甲を延ばし、床につけ、足の裏に尻をおく坐法に変わった、といいます。


坐るは尻をスエることであると。


脆座より楽な形で固くるしくないのです。


アグラはなにも学生諸君だけではないのです。


つい先日、さる仏教による法事がありましたが、畳の上で正座をする客は少なかったですね。


電車やバスに乗って腰を深く座席にかけずに、浅くかけて長い脚を投げだしたり、組んだりする人も多く見うけます。


戦後アメリカ兵たちがやっていた姿がサングラスと共に日本に残ったのではないでしょうか。

世界を養う植物の話 9

もし遺伝子抑制が取り除かれ、植物体全体がタンパク質を含むことができたら、タンパク質を摂取するために葉を直接収穫することができるでしょう。


そうなれば、野菜のタンパク質の総トン数は、いまダイズ豆から生産される量の何倍にもなるでしょう。


また、別のシナリオでは、タンパク質の遺伝子をバクテリアに取り込んで培養すれば、直接タンパク質が生産されるのではないでしょうか。


その結果はどうでしょうか?


即席豆腐のようなものができるのではないでしょうか。


我々は、最終的に遺伝子工学によりこのような驚くべきことが成し遂げられることを期待しています。


しかし、遺伝子工学者が、このようなことを成し遂げるようになるまで、利用可能な遺伝子が残っているでしょうか。

世界を養う植物の話 8

もし、根で光合成をしようとしたり、熟すと赤く肉質になる葉をつくろうとするなら、トマトではなくなってしまうでしょう。


個々の植物や動物が固有の形を具えているのには、揺るがせにできぬ秩序というものが存在するのです。


しかも、この秩序は偶然の産物ではありません。


このような正確な調節のメカニズムがどのように起こるかについて、まだよくわかっていないのですが、たぶんこれからそのプロセスは解明されていくでしょう。


ダイズの種子は、動物が食物の中で必要とするアミノ酸のすべてを含む、4種類の貯蔵タンパク質で満たされています。


そのタンパク質の生産を司る遺伝子は、初期の種子の形成中に発現し、種子が熟すと発現しなくなります。


その遺伝子は、成体になった植物体には決して現われないのです。


このようにして、ダイズの豆だけがタンパク質を含むのです。


世界を養う植物の話 7

たとえば動物の遺伝子をバクテリアに入れ、その微生物を使ってインシュリンやインターフェロンや人間の成長ホルモンといった生産物が大量につくられているからです。


だからもっと複雑なことができると見ても、決しておかしくはないと思うのです。


これからもしばらくは、伝統的な育種法に頼る必要があるでしょう。


今日の遺伝子工学では、植物の遺伝子と分子のレベルでの遺伝子制御についての理解は、動物の遺伝子についての理解に比べると、はるかに遅れています。


必要とされる個々の遺伝子がまだ認識されていないのです。


しかし、認識できたからといって、そこですべてが解決されるわけではありません。


植物の生育過程の適切な瞬間に、特定の遺伝子が発現したりしなかったりということがなされる必要があります。


まだあまり理解されていないものに、調節遺伝子やそのメカニズムがあります。


ごくごくわかりやすく述べると、トマトの場合、果実の中で生産される物質は、その植物の根や葉でつくられるものとは違うということです。

世界を養う植物の話 6

ときに、野生の雑草がたいへん意外な面で貢献することがあります。


水田には、水に浮くアカウキクサという小さな野生の水生シダの見られるところがあります。


このシダがあると、イネの生長が促されるのでした。


このシダは、根粒に匹敵するようなものを持っていたのです。


つまり、藍藻がこのシダと共生していて、大気中の窒素固定を行なっているのです。


窒素は水田の水に放出され、イネによって吸収されるので、肥料をやる必要性が削減される。


現在このシダを、進んで育成している地域もあります。


ここまでのところ、科学者らが有益な遺伝子を移したり使ったりすることについて述べるとき、伝統的な育種方法を使うことを意味していました。


いま地平線上にぼんやり見えてきているのは、ある生物から必要とする遺伝子を取り出し、それらを他の生物に挿入する可能性です。


これは、すでにある分野では行なわれていることです。

世界を養う植物の話 5

最近、南アメリカのイネ科草本のなかに、窒素固定をできるもののあることが発見されました。


これらの種はまだ交雑に用いられていませんが、高価な肥料に依存しない植物をつくり出すのに利用できるのではないかと思われています。


たぶん、このような根粒を持つイネ科草本がまだ存在しているでしょうし、それはもっと交雑に適しているものであるかもしれません。


コムギを乾燥地で育てるには問題があります。


しかし、オーストラリアでは、たった1回の灌水で、種子から成熟する1年草が知られています。


どうしてそんなことが可能かというと、並外れて生長が早いからでもあります。


もし、この草が持つ遺伝子を穀物に導入できたら、そのときには不毛の地域でも農耕が可能となり、良好な土地ならば年収穫量を増やすことができるでしょう。


最近の最も浮き立つような発見のひとつは、メキシコの多年草テオシントです。


このトウモロコシに近縁な野生種は何年間も生きています。


この草が持つ遺伝子を利用すると、恐らく、1回種子をまけば、その後何年間も収穫できるという熱帯トウモロコシをつくり出せるのではないでしょうか。

世界を養う植物の話 4

1組は穀粒のグルテン含有量を増加させ、もう1組は極端な環境に対する耐性を新しいコムギに与えました。


この2番目の改良は極めて重要でした。


なぜなら、初期のコムギは他の気候に順応できなくて、そのために中東以外に普及させることができなかったからです。


コムギの交雑の歴史はまだ止まることがありません。


今日の育種家たちは、これまでの改良品種をさらに改良するために、新しくより良い形質を常に探しているのです。


まだまだ多くの野生種が手つかずのまま残っており、それらの特性を利用すればコムギをより有用な作物にできるかもしれません。


植物によっては、生長を助長するバクテリアを含む特別な根を持つものがあります。


その微生物は空気から窒素を取ることができ、植物の繁茂に必要な硝酸や、亜硝酸塩に変えることができます。


植物が行なうこのプロセスは、窒素「固定」と呼ばれています。


もし、穀物もこのような窒素固定根粒を持っているなら、高価な窒素肥料を必要としないでしょう。


科学者たちは何年間も穀物と根粒を持つ植物との雑種をつくろうとしましたが、まだ成功していません。

世界を養う植物の話 3

コムギの歴史は長くて変化に富んでいます。


コムギは最もよく知られた穀物です。


なぜなら、タンパク質グルテンを含むコムギから小麦粉がつくられるからですね。


小麦粉を湿らすと、グルテンを含んでいるために練り粉に粘り気が生じ、パンをつくることができます。


最初の野生コムギは中東で収穫されたようです。


たぶん、初めは栽培したのではなく、野生コムギから粒を集めたのだと思うのです。


最初に栽培されたコムギの粒は、頭部が砕けやすく、皮のとれたものでした。


コムギ畑のそばに、ゴーツ・グラス(アエギロプス・キリンドリカ)というイネ科の草が生えていて、たまたま偶然に栽培コムギと交雑が起きました。


それも1度きりではなく2度起きたのです。


実用的な観点からは、ゴーツ・グラスは、それ自体ではむしろなんの役にも立ちません。


しかし、その交雑によって、コムギは2組の重要な遺伝子を持つことになりました。

世界を養う植物の話 2

カリフォルニア大学のデイヴィス校の育種家は、食べられる果実をつけるトマトに耐塩水性をもたせるために、これらの遺伝子をうまく使用したのです。


こうして生まれたトマトには、塩気のある水をやることができます。


非常に現実的な可能性として、このようなトマトの野生種は、未来の農業に重要な役割を果たすといえます。


誰が50年前に、野生のガラパゴス産トマトが有益であろうと予想したでしょうか。


トマトは果実以外の部分も役に立ちます。


刺激性のある葉は虫を寄せつけないと報告されていて、最近の研究では、葉にはまた、水虫などの真菌性皮膚病に有効な殺菌成分が含まれているかもしれないということです。


個々の種が持っている、隠れた効用を予め知り得ないので、ひとつの種が絶滅したときに、どれほどすばらしい効用が失われるかもわからないのです。